デジタルマーケティングをご支援
「チケット・グッズ購入履歴からお客様の顔が見える」
来場傾向データが、次のアプローチの確かな道しるべに

ガンバ大阪のホームスタジアム「Panasonic Stadium Suita(パナソニック スタジアム 吹田)」は2016年完成時に大きな話題を集めましたが、その後徐々に来場者数が減少していったと言います。これを受け、同社はパナソニックISとともにデジタルマーケティングを開始。管理部 経営企画課長の竹井様、顧客創造部 集客事業課の奥永様に、パナソニックISの支援で得られた成果や率直な感想を伺いました。
導入のポイント
来場者のデータをもとに来場動向を分析し、新シーズン開始時の離脱防止に注力
地理情報と会員情報を組み合わせ、ポスティングに最適なエリアを割り出し
リピート者数やコアファンの増加数などが試合ごとにわかるから、シーズン途中での方向転換も可能に
課題
  • 新スタジアムが話題を呼んだが入場者数が徐々に減少

  • 来場者のデータは既にあるものの、データを活用できない
  • シーズン終了後でないと成果が分からず、迅速に施策を打てない
解決
  • チケットの購入履歴をもとに複数年の来場動向を分析
  • 地理情報と会員情報を組み合わせ、ポスティングエリアを選定
  • 試合ごとに状況を把握できるため、シーズン中に分析可能

新スタジアムが話題を呼ぶも、来場者数が徐々に減少

――パナソニックISにデジタルマーケティング支援を依頼された経緯についてお聞かせください。

竹井氏 2016年に現在のホームスタジアムであるPanasonic Stadium Suita(パナソニック スタジアム 吹田)が完成し、寄付によって作られた国際規格のスタジアムということで大きな話題を呼びました。

それまで使用していた万博記念競技場に比べキャパシティが倍になり、初年は1試合の平均来場者数が約1万人増の2万5342人を記録しました。ところが、それから毎年約1000人ずつ1試合平均入場者数が減っていったのです。新スタジアムの目新しさが減少していった結果だと思いますが、このままではいけないとかなりの危機感を抱いていました。
株式会社ガンバ大阪 管理部 経営企画課 課長 竹井 学 氏
――ホームゲームが毎年17試合ですから、年間で考えると約1万7000人ずつ減っていったということですね。

竹井氏 そうです。チケット価格と掛け合わせると数千万規模のインパクトとなります。やはりスタジアムの魅力を活用した集客施策を新たに打たなければいけないと。パナソニックISとは年間パスの管理システムやスタジアム内店舗の販売管理システムなどの導入で以前からお付き合いがあり、集客施設向けにデジタルマーケティング支援を行っているということも聞いていたので、相談させていただきました。

チケット・グッズ購入履歴からお客様の顔が見える

――具体的にはどのような施策に取り組んだのでしょうか。

奥永氏 来場者のデータをもとに、来場動向を分析しました。Jリーグには「JリーグID」という会員サービスがあり、試合チケットやグッズを購入できるようになっています。つまり、来場者のデータは既に貯まっていたんですね。ただし、実際どのようにアプローチすればよいのかが分からない状態でした。

パナソニックISと一緒に複数年の来場動向を見ていったところ、「昨シーズン来場された方が今シーズンは来場されない」というケースが多いことが分かりました。過去2年の間に来場しなくなった方が全IDの内6割を占めていたのです。そこで、シーズン跨ぎの離脱防止に取り組みました。
株式会社ガンバ大阪 顧客創造部 集客事業課 奥永 憲治 氏
――Jリーグは12月中旬~2月中旬までがシーズンオフですから、その間でお客様が離れないような施策を打ったということですね。どのようにアプローチしたのでしょうか?

奥永氏 例えばメールプロモーションです。これまでも行っていましたが、お客様を来場傾向ごとにセグメントに分け、それぞれに合った件名・文面のメールを送りました。「昨年開幕戦来場者」「監督就任試合来場者」「5回以上リピーター」といったセグメントです。

パナソニックISには、データに基づいたデジタルなアドバイスはもちろんのこと、どのような件名・文面がよいかというアナログな面でもアドバイスをもらいましたので、より丁寧なアプローチができたんじゃないかと思っています。イベントや企画ありきですが、より情報が伝わりやすいメールマーケティングを行うことで、2019年の平均入場者数前年比118%となり、クラブ最多平均入場者数を達成しました。

竹井氏 デジタルマーケティングの一番良いところは「お客様の顔が見える」という点にあると思います。チケットの購入履歴を分析することによって、お客様が何人連れで今季何回ご来場いただいているのか、どこの席を買われているのか、そういったものがすべてわかるようになり、次のアプローチに活用できるようになりました。

地理情報と会員情報を組み合わせ、ポスティングに効果的なエリアを選定

――データ分析によってお客様の顔が見えるようになり、施策の精度が上がったんですね。他にもそういった事例はありますか?

奥永氏 ポスティングもその1つです。ガンバ大阪ではスタジアムの周辺地域にチラシを配布しているのですが、従来は我々の経験とカンで配布地域を決めていました。

そこで効果的な地域を割り出すために、地理情報と会員情報を組み合わせたデータをパナソニックISから提供してもらいました。具体的には、人口密度・世帯構成・推計消費額などの国勢調査情報と、各世帯から最寄駅までの距離・最寄駅からスタジアムまでの乗換回数といった鉄道データです。

エリア選定~ポスティング~効果測定を4試合にわたって繰り返したところ、「世帯数に対してホームタウン会員が少なく、スポーツ観覧料消費が高く、スタジアムへのアクセスが良好なエリア」へのポスティングが効果的だと分かりました。今までであればポスティング後の効果はまったく測定できませんでしたが、今はデータがすべて取れますので、何が効果的だったか、効果的でなかったのかが分かるようになったのが大きいですね。
地理情報と会員情報を組み合わせ、ポスティングが効果的な地域を割り出し

コロナ禍の来場動向は予想と真逆だった

――コロナ禍においては、どのような施策を行われましたか。

竹井氏 無観客試合や収容人数の制限など、コロナがもたらした影響は非常に大きく、年間来場者数が大きく落ち込んでしまいました。その変化をとらえるためにも、やはりデータを活用しました。

データを分析する前は「年間来場回数が多いコアなお客様にまず戻ってきていただきたい」と考えていました。これまでの経験から、コアなお客様はそんなに離れないだろうと思っていたんですね。また、コロナ禍ということでレジャーに対する拒絶感があるのではと考え、新規のお客様に関しては大きく見込んでいませんでした。

ですが、ふたを開けてみると全く逆で、コアなお客様がスタジアムから離れていることが分かりました。一方で、今まで来場されたことのないお客様が多く来場されており、その割合は想定と異なっていました。コロナ禍で制限のある生活をしていた中で、仲間や家族と楽しめるレジャーのひとつとしてサッカー観戦が選ばれていたようです。

大きな環境変化にともなって、これまでの経験とは全く違う傾向が見られたわけですが、データがなければ気づけなかったと思います。新規のお客様にサッカーの楽しみを知っていただこうと、シーズン途中で施策を打ち直せたのは大きな成果でした。ゴールデンウィークや夏休みなど家族連れの方が多く来場される傾向のある試合に関しては、プロモーションの仕方を変えたり、ファミリー向けのイベントを実施することで集客を伸ばすことが可能になりました。

――シーズン途中で方向転換できたということですね。今までは、シーズンが終了してから来シーズンに向けて新たに検討していくという形だったんでしょうか。

竹井氏 そうですね。デジタルマーケティングを導入するまでは、シーズン終了後に翌年の年間パスやファンクラブの入会数を見ることで、昨年の成果が次のシーズンの人気につながっているかどうか結果としてわかるという程度でした。現在は来場者数やリピート者数、コアファンの増加数などが試合ごとにわかりますので、その状況によって施策を打てます。試合がないと手が打てませんので、シーズン中にそういった分析ができるというのは、スピード感をもって取り組むという点では大きな武器になりますね。

デジタルマーケティングは限りある時間や予算を有効に活用できる

――パナソニックISの対応はいかがでしょうか。

奥永氏 本当にガンバに寄り添ってくれています。我々だけだとどうしても視野が狭くなってしまうところを、デジタルの視点やサポーターとしての視点、色々な視点でアドバイスしていただけるので、視野が非常に広がります。たまに視点が偏りそうになったときも「お客様はこんなことを喜ばれていたのではないか」など、ある意味アナログなアドバイスもいただけるので、助かっています。

――最後に、集客施設におけるデジタルマーケティングを検討されている方に向けて、ワンポイントアドバイスがあればお聞かせください。

竹井氏 現場の経験値に加え、データで成果を見える化することによって次のアクションの精度を上げることができます。お客様のニーズを把握できる点もメリットです。アクションの精度が上がればデジタルマーケティングへの投資はきちんと回収できるものだと思いますので、まずはデータをきちんと活用して、お客様のことをよりよく知るというスタートを切るということが、興業としては大事だと考えています。

奥永氏 時間や予算といった有限な資源を有効に活用できるという点で、デジタルマーケティングは非常に有用なツールと感じています。どのお客様が今後来ていただける可能性があるか、あるいはどのお客様が難しいかという傾向が非常にわかりやすくなりました。パナソニックISが一緒に歩んでくれていることは本当にありがたく思っていますし、今後も引き続きお願いしたいです。

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当社担当からひとこと

加藤 藍子
Jリーグで整備されている情報を、ガンバ大阪様の業務に合った形でどのように活かせるか、お客様と一緒になって考えました。専門用語が多いデータ分析の世界ですが、お客様が普段からお使いの言葉に置き換えて伝えるように心掛けたことで、共通のゴールへと向かうことができたと感じております。今後も「データの視点」「業務運用の視点」「来場者様の視点」それぞれからデータの活用方法をご提案してまいります。
取材︓2023年2月14日 
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