「来館者属性が見えたことで、マーケ方針が明確に」
水族館の集客マーケティングをデータ分析で支援

「水族館のある暮らし」をテーマに、都市部にある公園のように居心地の良い水族館を目指した京都水族館・すみだ水族館を運営するオリックス水族館。閑散期の来館者数を増加させたいと考え、これまでさまざまなイベントや施策を行ってきましたが、その成果は不明瞭でした。そこで、Webチケットシステム導入を機にデジタルマーケティングを導入。その経緯と成果、パナソニック インフォメーションシステムズ(以下、パナソニックIS)の支援などについて伺いました。
導入のポイント
チケット売上データの整備・分析と施策の効果検証により、来館者の属性ごとの傾向を可視化できた
データだけでなく、データから得られる示唆も含めたサポートで、マーケ戦略へ最短距離で到達できた
「狙った客層が来ているか」を分析する考えが浸透し、社員全体がデータ志向にマインドチェンジ
課題
  • 来館者属性に基づかない施策では集客アップに直結しづらい

  • データ分析に必要な来館者の属性を得る手段がない

  • データを整備・分析するスキルや知見が不足

解決
  • データの整備・分析と施策検証により、来館者の傾向が可視化

  • 特定の属性を狙って施策を打てるようになり、来館者増加に成功

  • 毎月の来館者数を予測できるようになり、PDCAサイクルが大幅加速

豪華なコラボ企画も、来館者属性を把握
できていなければ集客につながらない

――デジタルマーケティングの導入背景をお聞かせください。

鷲見氏 閑散期や日中の空いている時間帯の集客アップを目指し、デジタルマーケティングを導入しました。これまでもコラボ企画や著名人を交えたイベントなどを行ってきましたが、必ずしも当社が期待する集客アップにはつながりませんでした。その理由として、「施策が来館者属性に基づいていない」という認識がありました。来館者属性とは、例えば、住まい・性別・年齢・来館理由といった情報です。そもそも、来館者属性を得る手段は館内やWebサイトのアンケート程度で、わずかなデータしかありません。つまり、来館者属性に基づいた施策を行える環境がありませんでした。我々もなんとなくの肌感覚は持っていて、これまではその肌感覚に基づいて施策を立てていたのですが、「この施策でこの属性の方を何人集客できる」といった精緻なレベルまではできていなかったんですね。

そこでたどり着いたのが、会員登録を促し、来館者属性を得ることができるWebチケットです。Webチケットで得られた来館者属性に基づき、デジタルマーケティングを行えば、来館者の増加につながる施策を企画できると考えました。そこで、Webチケットとデジタルマーケティングをセットで支援してくれるベンダーを探すことにした次第です。
オリックス水族館株式会社 事業推進部 担当課長 鷲見 祐貴氏

データから得られる示唆のおかげで、最短距離でゴールを目指せる実感

――パナソニックISは、開館当初よりチケット管理システムの構築・保守・データ連携などに携わっていたそうですね。

鷲見氏 はい。10年以上のお付き合いから、強固なセキュリティ体制と厳格なデータ管理には信頼できるものがありました。さらにパナソニックISは、パナソニックグループが運営しているサッカーのクラブチーム「ガンバ大阪」や、バレーボールチーム「パナソニック パンサーズ」のデジタルマーケティングに携わっているとのこと。プレゼンでは、デジタルマーケティングによる施策で観客動員数が大きく伸びている実績を拝見させていただきました。スポーツと水族館とではジャンルが違いますが、そういった実績は活かせるのではないかと感じ、パナソニックISにお願いすることにしました。

――導入プロセスと現在の運用状況を教えてください。

鷲見氏 まずは、Webチケットを含むチケット全体の売上データをどのように整備・分析するか?という「見える化」の取り組みから始めました。3ヵ月ほどかけて形になってきたところで、実際の施策で得られた成果をデータに照らして効果検証する「施策検証」のフェーズへ進みました。パナソニックISに支援いただいたのは、データ分析・標準分析ビュー作成、デジタルマーケティングのプロセス構築、プロセスの運用アドバイス(施策の分析と検証)、PDCAの定型化などです。
▲プロジェクトの全体像
▲チケット全体の売上データの整備・分析から着手
――具体的にはどのような分析を行ったのでしょうか。

鷲見氏 購買経路・来館者の属性構成・来館時間帯・カレンダーによる影響という、大きく4つの視点で分析いただきました。来館者のうち、ファミリー層とファミリー層以外だとどちらが多いか。来館者がどこから来ているのか、いわゆる一次商圏、二次商圏、三次商圏の分布はどうか。また、予想より月間来館者数が少なかった場合は、どのような属性の方が来館されていたのか、されていなかったのか。といったことです。
データに加えて、データから得られる示唆もパナソニックISがレポーティングしてくれていたので、「マーケティングの目指すべき方向に最短距離で向かえている」という手ごたえがありました。

マーケティング施策の効果が具体的にわかる

――分析結果から期待した来館者属性は得られましたか。

鷲見氏 来館者属性のなかでもっとも知りたかったのは、一次商圏、二次商圏、三次商圏の分布です。京都水族館は、来館者のうち多くの割合を占めるのが近隣の一次商圏の方。すみだ水族館はそれに加えて、東京スカイツリーに併設している施設ということもあり、二次商圏、三次商圏、さらにはその圏外から来館される方もかなりの数になります。従来から肌感覚として抱いていた商圏の分布傾向が、データで明確になったことは大きいです。
▲商圏のイメージ(実際とは異なります)
京都水族館では、CMなど露出前後での来館者の商圏の変化を知ることで、例えば集客の減ってきていた二次商圏に効果があった、といった形で施策に効果のある商圏が把握できるようになりました。データと組み合わせて評価することで、行っている施策の効果の裏付けができるようになりました。

予測数値と実績数値を突き合わせるとPDCAサイクルが回り始めた

――特に価値を感じたサポートはありましたか。

鷲見氏 毎月の来館者数を予測するフォーキャストを作成いただいたことです。来館者数の予測が立てられなければ、施策によって狙い通りの成果が出せたのか判断が付きませんが、これまで我々では予測数値を出せていませんでした。
そこでパナソニックISに、過去2年間分の実績に基づいた来館者数の予測数値を算出いただき、事業計画や施策、実際の来館者数と突き合わせて議論する場を設けていただきました。予測数値と実績数値にギャップが生まれた場合は、ギャップを埋めるための追加施策をどのように行うか、という議論ができます。分析、計画、実施、検証というPDCAのサイクルを月次で回せるようになり、スピード感が上がりました

予測数値と実績数値を突き合わせられるだけでも大きな違いで、極論、失敗が失敗でなくなるんですね。狙った効果が出なかった施策もあったのですが、「狙った効果が出なかった」とデータで分かることが重要。これまでは肌感覚でしたから。では、それは露出の仕方が悪かったのか?企画自体が良くなかったのか?など振り返り、次回以降の改善につなげられるようになったのも、重要な意味を持つ成果だと感じています。

▲来館者数の予測数値を算出し、事業計画や施策、実際の来館者数と突き合わせて議論

デジタルマーケティングの一番の成果は社員のマインドチェンジ

――デジタルマーケティング導入による一番の成果は何だと思いますか。

鷲見氏 何よりも大きかったのは、社員のマインドチェンジです。これまでも、各館ともに一生懸命に企画やイベントを盛り上げてくれていましたが、結果に対して裏付けとなる明確な根拠があるわけではありませんでした。しかし、来館者の属性や数字が可視化されると、我々と同様にその意味を考えるようになります。「なぜ、この商圏の来館者が少ないのか」「どうすれば来てもらえるのか」という考えが浸透し、自主的に行動するマインドを持つ社員が増えたと感じます。事業推進部から離れ、各館で自走していくのが業務面での最終ゴールとなりますから、マインドチェンジはゴールに向けた大きな一歩といえるでしょう。

パナソニックISは、単なるデータだけでなく、まさに「なぜ、この商圏の来館者が少ないのか」「どうすれば来てもらえるのか」といった示唆も含めてアドバイスをくれます。社員全員でデジタルマーケティングを進めるためには、なくてはならない存在だと感じます。

――パナソニックISに対する評価をお聞かせください。

鷲見氏 我々に伴走しフォローしながら進めていく支援の仕方は、デジタルマーケティング初心者の我々にとって、本当にありがたいと思っています。今ではビジネスパートナーという枠を超え、チームとしての結束力が生れていると感じています。また、ハードルを上げてしまう我々の要求に対し、いつもしっかり応えてくれる姿勢も素晴らしいと感じています。
――今後は自社での自走化を進めていくそうですね。

鷲見氏 パナソニックISに、我々でも読み取りやすいダッシュボードを作成いただきました。すぐに自走化するのはなかなか難しいので、現在はパナソニックISからのレポーティングやアドバイスも継続して受けている状況です。

我々としては、全社員にマインドチェンジを促す意味でも、自分たちでデジタルマーケティングを運用することが重要だと考えていますから、今後はダッシュボードの使い方を含め、デジタルマーケティングの運用方法を伝授していただきながら、社内の知見やスキルを向上させていきたいと考えています。引き続きご支援のほど、よろしくお願いいたします。
▲自走化をめざしてダッシュボードを作成  ※表示している数字はダミーデータです

パナソニックISに相談してみる

当社担当からひとこと

村上 巧輝
パナソニックISからお出しさせていただいた分析結果・示唆をもとに、マーケティング戦略の効果的な検討に繋げていただくことで、集客アップの一助ができており、非常に嬉しく感じております。伴走させていただく中でも超えるべきハードルは常に更新されていき、パナソニックISとしても非常に手ごたえのあるご支援内容だと考えております。今後は、データ分析・レポートの質向上も含めて更に進化させ、データとマーケティング戦略の架け橋を務めることでよりお役立ちできるよう、ご支援・ご提案をさせていただきたいと考えております。

取材︓2024年7月10日 
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