IT関連業務が年々増加。できる限り運用負担を減らしたい
「実は、シンクライアントの導入は数年前から何度も検討してきました」と、ロザイ工業総務部でR-NET(Rozai-Network)を担当する吉田宗子氏は明かします。その直接のきっかけは、PCの管理運用負担を軽減したいという思い。吉田氏は本社部門のシステム運用をたった一人で担当、さまざまな取り組みで運用効率化を追求してきたものの従来の手法に限界を感じていたといいます。
ロザイ工業株式会社 総務部 R-NET管理 吉田 宗子 氏
しかし当時はクラウドという概念がなく、シンクライアントも自社資産としてサーバを持ち、管理運用することが前提。初期費用が高額になってしまうことから、なかなか実現には至りませんでした。
そんな状況に変化が訪れたのは2010年の終わり。本社勤務社員の利用するPC約100台のリプレース計画をきっかけに、再びシンクライアントを検討し始めたところ、パナソニックISが仮想デスクトップサービス(DaaS)を提案したのです。それはロザイ工業が持っていたシンクライアントに対する概念を大きく変えるものでした。
「シンクライアントを先進的なクラウドサービスとして利用できる点に、今までにない魅力を感じました。これなら、シンクライアント導入の目的であったPCやサーバの管理運用の大部分から解放されるばかりか、IT統制面での課題を解決できますし、初期投資も大幅に抑えることができる。これならいける!と考えました」と、吉田氏は当時の手ごたえを語ります。
しかし、DaaSの導入にはクリアすべき大きな課題があったのです。それは、同社業務に不可欠なCAD※2の取り扱いです。CADは画面転送量が非常に大きく、従来の画面転送型シンクライアントでは不向きとされてきました。そのため、パナソニックISも「CADは従来通りPCで運用し、その他はDaaSを適用する」方式を提案していたのです。
しかし「当社は案件ごとに文書や表もCADデータと一括管理しています。DaaS適用のためこれらをバラバラに管理するという選択肢はありませんでした」と吉田氏。「DaaSを適用しても業務プロセスは変えない」―そのための方策を模索していた2011年春、あるニュースが飛び込んできました。それは、同社が活用するAutoCAD※3のCitrix XenAppへの対応が正式表明されたというもの。これにより、「すべてのPC利用をDaaSで」という吉田氏の構想が、実現に向け具体的に動き始めたのです。
※2 CAD(computer-aided design):コンピュータを利用して機械、各種建築物、電子回路などの設計を行うシステムの総称。
※3 AutoCAD:オートデスク社が提供する図面作成ソフトウェア。