仮想デスクトップソリューションを導入
授業用と校務用の共存を実現した二刀流
運用コストを抑え、教職員の多様な働き方を支える礎に

より良い教職員環境のため、ICTの構築に力を注いできた富士市教育委員会。GIGAスクール構想により、児童生徒用にPCが配布されたことを受けて、第三期のリプレースではパナソニック インフォメーションシステムズ(以下、パナソニックIS)とともに授業用と校務用のPCの最適化に取り組みました。
そこで生み出された、一台のPCで授業用と校務用を使い分ける二刀流について、背景と導入状況、コロナ禍での導入効果などを詳しく伺いました。
導入のポイント
授業用と機微情報を扱う校務用を最適化し、一台で授業用と校務用の二刀流を実現
パナソニックISの高い技術力と提案力により、一台二役の二刀流が現実のものに
アイコンのクリックだけで環境を切り替えられるから、授業もリモートワークも快適に操作できる
課題
  • 校務用は児童生徒の機微情報を扱うため、セキュアな環境が必須
  • 円滑な授業を行うには、PC自体に十分なスペックが必要
  • 保守面の不安とコストが高くなるため、二台の運用は避けたい
解決
  • セキュアなシンクライアントで機微情報は残さない
  • 授業用は13インチ・Windows 10搭載環境。授業で快適に使える
  • 一台に授業用と校務用を共存させた二刀流を実現

校務用だけでなく授業用も必要に

――今回、第三期のリプレース背景と課題についてお聞かせください。

小滝氏 第一期はシンクライアントをベースに一人一台貸与の校務用PC環境の構築、28年度(2016)の第二期はICTの利活用をテーマに授業コンテンツのマルチメディア化を実現するサーバおよび端末のスペックアップなどを実施しました。そして今回の第三期は、授業用と校務用のPCの最適化が課題でした。

発端はGIGAスクール構想に従い、富士市も2020年度に授業用として児童生徒用に一人一台PCを配布したことです。このGIGAスクール構想の補助対象は児童生徒用のみ。教職員用は補助の対象ではありませんでした。児童生徒用に配布した10.1インチモデルを使う手もありましたが、さすがに教職員には小さすぎます。「校務用PCを使えば良いのでは?」と思うかもしれませんが、校務用は児童生徒の個人情報や成績といった機微情報を扱うため、セキュアな環境が必須。そもそもシンクライアント環境ですから、校務用PCに高スペックが必要な授業用の環境を設けることは不可能でした。
富士市教育委員会 学校教育課 教育指導室 指導主事 小滝 智之 氏
そこで令和3年の第三期リプレースは、授業用と校務用のPCの最適化を優先事項としました。やはり、校務用と授業用に2台のPCを持つのは現実的ではありません。富士市の場合、リモートワークを容認していますから、保守面の不安とコストが非常に高くなります。教職員にとっては持ち歩く際に「重い」という物理的な問題もあります。

最終的に現場である教職員の声と富士市教育委員会の総意としてまとまったのは、校務用のシンクライアントの使い勝手の良さ、セキュリティの高さをそのまま継承しつつ、授業用も兼ねる二刀流でした。とはいえ、授業用と校務用とでは、比較表(下図)のように求めるものがまったく異なるため、ひとつのPC内に2つの環境を混在させる二刀流は、かなりハードルが高い要求だったと思います。

第三期のリプレースで採用したシステム

――ベンダーにパナソニックISを選定した理由と、同社が提案したシステムをお聞かせください。

小滝氏 関係のあるさまざまなベンダーにお声掛けしました。今回の難しいリプレースに手を挙げたのは、第一期と第二期を手掛け、我々のICT環境を知り尽くしているパナソニックISでした。何度も協議を重ね、パナソニックISが提案した以下のシステムを採用させていただきました。

<PC側>
従来のシンクライアント端末ではなく、児童生徒と同じ通常のWindows 10を搭載するPC(HP Elite X2 G8:13インチの2in1セパレートタイプ)。PCに搭載されているローカルOS(Windows 10)は授業用として利用する。校務用として利用する場合は、従来通り、クライアントのリモートアクセスツールを経由し、サーバ上の仮想デスクトップ(Citrix Virtual Apps and Desktops)を画面転送で呼び出し利用する。これにより、PCには機微情報は残らない。
<サーバ側>
校務用は機微情報を扱うため、従来と同等のセキュリティ性能を持ったサーバ。将来的なBCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)を考慮し、重複排除処理機能を装備し大量のデータを短時間でバックアップできるHPE SimpliVityを選定。コストダウンも図れる。
進捗についてはサーバの設置が2021年6月。PCは同年11月には各校の教職員に計1,300台を配布しました。配布先の内訳は小学校が27校、中学校が16校、分教室が1校、さらに教育プラザ(教育複合施設)と市役所の教育従事者にも配布しています。

もっとも使いやすいスタイルの二刀流

――第三期のリプレース、二刀流の評価をお願いします。

小滝氏 まず、現場にこのPCが届いたときは、教職員たちから歓声が上がったと聞いています。13インチの2in1でCPUもメモリも十分、キーボードの取り外しが可能なセパレートタイプですから、授業用にも校務用にも実用的に使うことができます。しかも、次のリプレースまでの保守もあります。そして何よりも、ここまで使いやすいものになるとは思わなかったというのが正直なところです。

立ち上げた直後は授業用の環境で、あらかじめ用意されているアイコンをクリックすれば、ネットワークを切り替えて校務用として使うことができます。アイコンのクリックだけで授業用、校務用として使い分けができますから、現場の負担がありません。セキュアな仕組みを維持しながら、もっとも使いやすいスタイルを提案いただいたパナソニックISには本当に感謝しています。

先日は二要素認証の仕組みを導入し、さらに使い勝手が良くなりました。それまではセキュリティを担保するため、授業用と校務用に2種類のIDとパスワードを用意。この部分に関しては、現場の方々に負担を強いていました。そこで、なるべく現場の負担を軽減したいと思い、パナソニックISと一緒にWindows Helloによる指紋認証と顔認証を検証し続けてきました。

導入した二要素認証は、起動直後は指紋認証もしくは顔認証の生体認証、校務用に入るときは従来通りのIDとパスワードという仕組みです。生体認証は個人に紐づくものですから、以前よりもセキュリティは向上していると考えています。それでいて、利用者が覚えるIDとパスワードはひとつだけですから、使い勝手が向上。現場からは「操作が楽になった」と評判も上々です。

手放せないリモートワークできる利便性

――コロナ禍という状況ですが、二刀流の効果は発揮されていますか。

小滝氏 授業用と校務用どちらも二刀流が非常に役立っています。例えば、コロナ禍ではクラス全員が教室に集まって授業を受けることが困難です。登校できない生徒とは、授業用の環境でMicrosoft Teamsを利用してつなぎ、リアルタイムで授業を配信しています。

校務用ではテレワークでの利用が増えました。テレワーク自体は以前から可能でしたが、それでも一日あたり最大800アクセス程度。コロナ禍になってからは、一日1,000件を超える日も珍しくありません。子育てや介護など、自宅のことも多いわけですから、遅くまで学校に残って業務をこなすよりも、早く自宅に帰ってリモートワークした方が効率的に時間を使うことができます。コロナ禍になって、教職員も実感しているのではないでしょうか。
授業ではタブレットとして活用(授業用ネットワークにアクセス)
職員室など、授業以外ではノートPCとして活用(校務用/授業用ネットワークにアクセス)
――パナソニックISへの評価をお願いします。

小滝氏 我々の要望に対し、素人では思いつかないような方法をいくつも提案していただきました。思い描いていた以上の環境を得られたのは、まさにパナソニックISの提案力と技術力によるものだと思っています。また、大小を問わず、トラブルが起こった際の素早い対応にも満足しています。特に世界的な半導体不足のなか、さまざまな協力会社と連携してPCの調達に動いていただいた姿勢に敬服しています。
(画像左)パナソニック インフォメーションシステムズ株式会社 営業 冨田 浩司
(画像右)パナソニック インフォメーションシステムズ株式会社 SE 田中 暢浩
――今後の展開をお聞かせください。

小滝氏 次回、第四期のリプレースは、より強固なBCPの仕組みづくりとフルクラウド化の試みを考えています。第三期のリプレースでは予算のこともあって、完璧なBCPの仕組みは構築できませんでしたが、第四期に向けた楔は打てたと思っています。ぜひ、第四期もパナソニックISの力を借りて構築できれば幸いです。

二刀流は運用コストの削減も可能

――最後にさまざまな自治体に向けたコメントをお願いします。

小滝氏 ICTの構築で問題になる予算に関しては、授業用と校務用を個々に用意した場合の運用・保守コストと二刀流コストを長期的な視点で比較すれば、どちらに軍配が上がるかは明らかです。何よりも現場の利便性が違います。二刀流はベンダーの力量が問われますが、パナソニックISのように提案力も技術力も高いベンダーなら問題なく実現できると思います。

我々としては、現場の児童生徒、教職員のためのICT環境構築を推進していくうえで、さまざまな自治体との協力体制も構築していければと考えています。何卒よろしくお願い申し上げます。

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当社担当からひとこと

杉本 太郎
今回の二刀流は富士市教育委員会様のご要望を踏まえた取り組みでしたが、我々としても現場の教職員の方々が教育そのものに時間を費やすことができる環境構築こそが重要と捉え、二刀流の実現に注力しました。
今後もクラウド化などの取り組みがあるかと思いますが、これからも我々は、児童生徒および教職員のためのスムーズな教育環境の構築を優先して提案してまいります。引き続き、全力で富士市教育委員会様をサポートさせていただきます。
取材︓2022年3月9日 
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