Platioを導入
モバイルアプリで飼育データの記録が簡単に
最大110分/日短縮された時間はいきものと向き合う時間へ

約260種のいきものを飼育・展示しているすみだ水族館は、適正な飼育のため、日々飼育データを記録しその平均値から指標を設定する作業を行っています。しかし、時間と手間がかかる飼育データの記録に頭を悩ませていました。そこで今回、パナソニックISの提案により、Platioによる飼育管理アプリの導入を決定。その経緯と期待する効果について詳しく話を伺いました。
導入のポイント
時間と手間がかかる飼育データの記録を効率化するため、スマホで使える飼育管理アプリを構築
年間約1,200時間かかっていた記録時間が、モバイルアプリにより一日最大110分短縮
アプリ上で個体や項目ごとに記録集計が行えるため、飼育の指標づくりを促進できる
課題
  • 日々の飼育データの記録に年間約1,200時間かかる
  • 日報入力のためのPC作業が大きな負担

  • 開業以来保管し続けている紙の管理・保管が課題
解決
  • アプリでデータ記録のステップを短縮。入力時間は約2分の1に
  • モバイルアプリで入力が可能。PCでの入力作業は不要に
  • 紙で保管する必要がなくなりデジタル化を実現

飼育データの記録に多くの時間と手間を要する

――飼育管理アプリを導入した背景と課題をお聞かせください。

柿崎氏 犬や猫などのコンパニオンアニマルとは違い、動物園・水族館で飼育されている野生生物は圧倒的にデータが少ないという現状があります。例えば、人気者のマゼランペンギンは当館に56羽いますが、国内総数は400羽弱にすぎず、飼育における情報がまだまだ少ない状況です。そこで、個体の特性を見極めつつ、日々の飼育データから平均値を割り出し健康増強に向けた指標を作っていく必要があります。当館では開業以来、飼育環境や個体の健康状態を日々データ化していますが、多くの時間と手間を要する飼育データの記録の効率化が課題でした。
オリックス水族館株式会社 すみだ水族館 展示飼育チーム長 柿崎 智広 氏
柿崎氏 まず、データ記録のフローには「メモ」「清書」「管理記録入力」の3つのステップがあります。具体的には、餌料の種類や給餌量を紙に「メモ」し、それをデータとして残すために別紙へ「清書」、さらにそれをExcelに入力するというフローです。当然、食事だけでなく、多岐にわたる健康状態に関するさまざまな情報を一個体ごと正確にデータ化しなければなりません。しかも、海獣類の飼育チームはペンギンのほか、ウミガメ2頭、オットセイ5頭も担当しています。飼育チーム十数名が協力しながらすべての個体のデータ化をするには、どんなに頑張っても毎日平均210分はかかります。これは年間で約1,200時間の計算です。

また、日報への入力のため、PCが設置されている事務室まで足を運ぶのも、飼育現場での作業がメインの飼育スタッフにとっては大きな負担でした。さらに、「清書」した紙の管理・保管スペースという問題もありました。開業以来、「清書」の紙はすべてファイリングし保管していますから、すでに相当なボリュームになっています。これ以上増えるのは避けたいというのが正直なところでした。

パナソニックISからの提案はモバイルアプリで実現できる点が魅力だった

――今回の取り組みの前に、改善は試みましたか。

柿崎氏 オンライン上で情報共有できるプラットフォームを利用し、データ記録のフローを効率化できないか試したことはあります。しかし、我々はITのプロではありませんから、何らかのシステム構築が必要となると先に進めません。そこで、開業当時からお付き合いがあるパナソニックISに相談させていただきました。パナソニックISには、これまでチケット販売管理&営業支援システムなど、業務にマッチしたソリューションを構築いただいており、今回もその提案力に期待しました。

――パナソニックISからの提案の印象をお聞かせください。

柿崎氏 パナソニックISの提案の魅力は、「メモ」「清書」「管理記録入力」を一回の入力で完了できること、そしてスマートフォンで入力できることでした。しかも、データはクラウドに蓄積されるため、いつでもどこからでも入力・参照が可能。ただし、本当に実務で使えるかどうかは未知数だったため、まずはトライアルという形でスタートすることにしました。

タイムトライアルでデータ記録の作業時間は約半分に

――トライアルの詳細についてお聞かせください。

柿崎氏 海獣類担当の飼育スタッフに参加してもらい、2022年11月から3カ月間トライアルを行いました。我々の運用イメージや現場の声をパナソニックISにお伝えし、現場に即した使い勝手に近づけていき、最終的にはこれまでの「メモ」「清書」「管理記録入力」の3つのステップと比較し、どれだけ短縮できるかのタイムトライアルで導入の合否を判断することにしました。その結果、飼育スタッフの入力スキルを加味しても、一個体あたり1分程度で入力できることが分かりました。トータルすると、記録にかかる時間は一日最大110分短縮でき、これまでの約2分の1になると試算できます。
柿崎氏 このトライアルにより、ペンギン、ウミガメ、オットセイでPlatioを使った飼育管理が有効と分かり、正式導入を決定させていただきました。ただし、ペンギン56羽に対する給餌は、「どの個体が何をどのくらい食べたか」を速やかに記録する必要があるため、その場でのスマートフォン入力は不可能。そこで、ペンギンに関してのみ「メモ」を残すオペレーションにしました。

パナソニックISは常に2~3通りの提案を用意してくれる

――トライアルでは、どのような点に気を配りましたか。

柿崎氏 データを細かく入力したいが、入力スピードは効率化したい。相反する2つのニーズがあったため、パナソニックISとはかなり綿密に打ち合わせしました。やり取りで印象的だったのは、レスポンスの早さと、常に2~3通りの提案を用意してくれていたことです。こちらの要望をそのままインプットして答えるのではなく、「こちらの方法はどうですか」と複数の選択肢を用意してくれました。

例えば、データの入力の仕方です。1羽のペンギンに対し、アジを何g食べた、イワシを何g食べた…と入力していく方法もあれば、アジの給餌について、この子は何g食べた、別の子は何g食べた…と入力していく方法もあります。作業しやすいのはどちらか?と、私たちの業務を想像しながら提案してくれていると感じました。こうした提案をいただけるのは、親身になって取り組んでいるからに他ならないと思います。

見やすく分かりやすい画面設計でソートも容易

――トライアルでは、どのような点に気を配りましたか。

柿崎氏 2023年7月より本稼働を開始したばかりですが、評価できるポイントはいくつかありますので、以下に挙げさせていただきます。

<データが見やすい>
必要な項目を一通り設けていただき、なおかつ見やすく設計されています。例えば、56羽分のペンギンをそのまま羅列すると個体ごとのデータが把握しにくくなりますが、配色などを工夫することで素早く識別できています。また、前日と翌日のデータが分かりやすく区分されており、スムーズな引き継ぎが可能になっています。

<便利なソート機能>
飼育管理において、項目ごとにソートできるのが便利だと感じています。例えば、1カ月の餌データを個体ごとに一覧で参照できるため、より素早く的確に健康に配慮した対応が可能になります。また、CSVファイルへの出力機能もありますから、後のデータ整理のためのExcelとの連携も容易です。

<いつでも改修できる>
飼育管理アプリのベースとなっているPlatioは、手直ししやすいプラットフォームだと伺っています。使いながら、さらに効率を高めることができるのではないかと期待しています。

他のいきものや他施設にも導入を検討

――今後の展開をお聞かせください。

柿崎氏 今回は海獣の飼育チームにアプリを導入しましたが、知見が溜まってくれば、ライフサイクルの長いサメなどの他のいきものにも応用できるのではないかと考えています。また、共通のいきものがいる系列の施設への導入も検討しています。
さらに、飼育スタッフがデータ記録している姿は、お客様にとってUX(User Experience:顧客体験)につながると考えています。あくまでも将来の構想のひとつですが、お客様の目の前でデータ記録を行い、スマートフォンの画面をモニターに映すなどすれば、飼育スタッフがいきものの命と真剣に向き合っていることを理解してもらえるのではないでしょうか。

――最後にパナソニックISへの期待の言葉をお願いします。

柿崎氏 我々の仕事の8~9割はいきものとの向き合いです。そして、日々のデータはいきものとのより良い向き合いを模索するためのものです。しかし、記録に2~3時間もかけていては、逆にいきものと向き合う時間が少なくなり、ストレスも溜まります。飼育管理アプリの導入でそうした時間を削減し、指標づくりはもちろん、いきものと触れ合う時間やいきものにとってより良い環境を考える時間に使えれば幸いです。今後もパナソニックISの支援は不可欠だと考えていますので、引き続きよろしくお願いします。

現場の声:飼育チームの藤原さん

トライアルでは我々飼育チームも参加し、パナソニックISにさまざまなお願いをさせていただきました。現場が重視したのは、入力に手間がかからないことです。すべて手入力していると時間がかかってしまいますから「メニューから選択できる」「数字だけ入力する」など、入力の簡略化を優先していただきました。パナソニックISは要望を快く聞き入れていただき、ほぼ理想のアプリになったと思います。飼育現場ですぐに入力できるところは、本当に利便性が高いと感じていますから、本稼働に期待しています。

パナソニックISに相談してみる

当社担当からひとこと

加藤 藍子
Platioはアプリ機能のパーツで構成されており、トライ&エラーしやすい商材です。トライアル環境でイメージを作成しては確認するという工程を重ねることで短期間で最適な内容へ落とし込めたと思います。業務におけるデータ入力の負荷にお困りでしたら、気軽にお声がけいただければと思います。
取材︓2023年6月12日 
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