Veeamを導入
「実績豊富なパナソニックISでないと出てこない発想」
電子カルテシステムのサーバを低コストで高速・安全に

2006年に電子カルテシステムを導入して以降、部門システムおよび医療機器との連携を構築するなど、数々の病院DXに取り組んできた松下記念病院。2024年に3代目となる電子カルテシステムのリプレースでは、サーバ部分をパナソニックISに依頼し、電子カルテシステムの高速化、低コストで拡張性に富んだ仮想環境、ランサムウェア対策を強化したバックアップ基盤などを構築しました。その背景と経緯、効果などについて詳しく伺いました。
導入のポイント
サーバのリプレースをパナソニックISに依頼したことで実現できたコストダウン
従来の医療業界とは異なる大規模サーバ構築経験に基づく発想力が可能にしたサーバ構築方法
ランサムウェア対策として新たにVeeamを導入するなど書き換え不能なバックアップを構築
課題
  • 午前中に起こりやすい電子カルテの動作遅延

  • システム追加ごとにサーバ購入。膨大なコスト増が発生

  • 医療機関を狙うランサムウェアの脅威。バックアップ強化が急務

解決
  • 電子カルテの高速化を狙い、オールフラッシュ化

  • 拡張性に優れたHCIで仮想環境を構築。低コストで拡張が可能

  • Veeamを活用した書き換え不能なバックアップ

ベンダーはグループのSIer会社が適任

――パナソニックISにサーバのリプレースを依頼した背景をお聞かせください。

篠原氏 電子カルテシステムのリプレースを検討し始めた2021年、当時は電子カルテシステムなどのIT基盤一式を病院情報システムに特化したベンダーにお任せしていましたが、リプレースではその体制を見直す動きが活発化していました。

今回はベンダーを一新することを前提にリプレースの検討を進め、その過程でお声がけしたのが、同じパナソニックグループのシステムインテグレーション会社であるパナソニックISでした。グループ会社以外のベンダーに任せている状況は、グループの資本が外部に流出してしまうことを意味します。つまり、経営的な観点からもこの動きは理にかなっていました。
パナソニック健康保険組合 松下記念病院 事務部 医療情報システム課 篠原 氏

専門家によるサーバ構築は質もコストも満足

――今回のリプレースは、ハードウェアとソフトウェアのベンダーを切り分けたと伺っています。弊害はなかったのでしょうか。

篠原氏 ハードウェアとソフトウェアの両方をパナソニックISにお願いするのがベストではあります。しかし、電子カルテシステムに関しては、どうしても知見やノウハウが必要になるため、ソフトウェアの方は実績のあるベンダーにお願いしました。

パナソニックISにお願いしたのは、ハードウェアにあたるサーバのリプレースでしたが、弊害どころかコストダウンという大きな恩恵を得ることができました。もともとパナソニックISは医療機関に限らず、さまざまな大手企業のサーバ構築を手掛けてきたシステムインテグレーションの専門家。サーバの選定・構築にあたって、構成内容もコストも納得のご提案をいただくことができました。

大規模なサーバ構築経験を感じさせる発想力で要件をクリア

――リプレースにあたっての要件、要件に対するパナソニックISの提案、そして効果などをお聞かせください。

篠原氏 細かいところを入れると数多くありますが、今回は以下3つの必須要件と効果を挙げさせていただきます。

<要件1.高速化>
課題:電子カルテシステムの動作に遅延が発生
当院は午前中に外来を診察し、午後に入院されている患者様を診察するのが基本的な流れになっていますが、800~1,000人ほどの外来があるため、いつも午前中に電子カルテシステムへのアクセスが集中してしまいます。データベースへのアクセスが増加し、書き込みの遅延が発生すると、患者様をお待たせすることにもなってしまいます。そこで今回は、電子カルテシステムの高速化を求めました。

提案と効果:SSD導入などで遅延解消
機器が新しくなったことに加え、SSDだけで構成するオールフラッシュのストレージが大きなポイントになりました。これにより、以前のような遅延はなくなりました。業務への支障がなくなり、外来の会計もスムーズに行えています。今回はネットワークを変えていないため、ネットワークのボトルネックは残っていますが、サーバのリプレースだけで速度向上を実現できたことには、大きな満足感があります。

<要件2.拡張性>
課題:システムを拡張する度にコストが増加

電子カルテシステムと連携する部門システムや医療機器は、医療の最適化や医療機器の進化に合わせ、リプレース後も入れ替えや追加を随時行う必要があります。しかし、これまで仮想基盤は構築していたものの、リソースに余裕がないため、システムの追加ごとに実機を購入。かなり費用がかさんでいました。そこで今回は、コスト負担を圧縮できるような高い拡張性をお願いしました。

提案と効果:HCIで低コストと拡張性を担保
HCI(Hyper-Converged Infrastructure)で仮想環境を構築していただきました。シンプルな構成で拡張性にも優れていますから、今後のシステム拡張に柔軟に対応することができると期待しています。しかも、今回はすべてのサーバを一新しましたから、更新時期がすべて同じになりました。これによって、予算を確保しやすくなり、運用・保守の面も大きく向上しました。

<要件3.バックアップ>
課題:ランサムウェア対策のバックアップシステムが不十分

継続的な医療提供のため、我々はあらゆる医療データを守らなければなりません。そこで当院は、BCP対策の観点から通常のバックアップと月1回の外部記憶装置バックアップによる遠隔地保管を行ってきました。しかし、近年は大規模な自然災害やサイバーテロの脅威が多発している状況。リプレースの打ち合わせを行っている最中にも、他院でランサムウェアの被害が発生していました。当院としては、これまで以上にバックアップ体制を強化する必要があると考えました。

提案と効果: Veeamでバックアップシステムを構築
グローバルシェアの高いバックアップソリューションのVeeamを活用し、強固なバックアップのシステムを構築していただきました。サブホストにVeeamでバックアップする仕組みで、初回時フルバックアップ以降は、日々の増分をバックアップしていきます。Veeamの特徴は強固なランサムウェア対策の機能を有していること。単にバックアップするだけでなく、書き換え不能かつ暗号化した状態でデータを格納。これにより、ランサムウェア対策としては高度な仕組みを構築できたと考えています。ちなみに、導入したVeeamはインスタンス(バックアップ対象)単位で課金されるユニバーサルライセンスのため、低コストと拡張性も担保されています。

もちろん、これまで通り、BCP対策として月1回の外部記憶装置バックアップによる遠隔地保管も継続。さらに、電子カルテシステム側のアプリケーションバックアップもあるため、世代管理も可能な3重のバックアップシステムを構築することができました。

このバックアップシステムで特筆したいのは、バックアップには25Gbpsの帯域が設けられているところです。おかげで、日中にリアルタイムでのバックアップが必要になった場合でも、業務への影響を気にすることなくバックアップできるようになりました。しかも、外部記憶装置へのバックアップはサブホストから行っているため、データベースへのアクセスを抑え、業務への影響は最小限となっています。こうした構築方法は初めて見ましたが、大規模なサーバ構築経験があるパナソニックISでないと出てこない発想だと非常に勉強になりました。
システム構成図

医療の基盤となるサーバは専門家に任せるのが得策

――パナソニックISへの評価をお願いします。

篠原氏 ハードウェアはトラブルなく稼働しています。電子カルテシステムに関しては、微調整を行いながら、最適化を図っているところです。当院はパナソニックグループということを踏まえ、パナソニックISにお願いした経緯がありますが、患者様に向けたより良い医療の提供、医療療従事者のより良い働く環境を考えるなら、医療の基盤となるサーバは専門家に依頼するのが得策だとあらためて実感しました。機能もコストも満足できるサーバを考えると、パナソニックISはさまざまな医療機関におすすめできると思います。

パナソニックISに相談してみる

当社担当からひとこと

穂垣 知宏
今回のリプレースでは課題を解決するだけでなく、お客様の立場となりどのようなシステムになれば良いかコストと性能のバランスも考慮し提案を実施しました。これまでの経験だけでなく社内メンバーの意見も参考にしながら提案した内容が採用され、やりがいのある提案だったと感じています。今後もより良い環境が提案出来るように、お客様目線を大切に活動していきたいと思います。
取材︓2024年2月9日 
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