データ活用の課題とは?企業の経営課題解決に向けて
データ活用の基本的な定義は、さまざまな視点から得られた情報をもとに、ビジネスにおける現状の問題点や解決策を洗い出し、企業活動へと反映させることです。客観的な情報にもとづいて意思決定を行えることから、戦略策定や施策の検討に欠かせない要素だといえます。
しかし、総務省のデータによると、日本企業は海外の企業に比べて、積極的なデータ活用が進んでいない傾向にあります。その背景には、組織への浸透が進まない、基盤が整っていないなど、体制整備の難しさがあります。
本記事では、データ活用の現状とそれによって得られる成果を整理し、具体的な解決策を紹介します。データ活用の基本を理解し、自社の課題解決にお役立てください。
目次[非表示]
- 1.日本企業のデータ活用の現状と課題
- 1.1.データ活用の現状
- 1.2.企業のデータ活用が進まない理由・課題
- 1.2.1.データ活用基盤や体制が整っていない
- 1.2.2.組織への浸透が進まない
- 2.企業のデータ活用で解決できる課題
- 3.企業のデータ活用を取り巻く課題解決策
- 3.1.データ活用プロセスの課題
- 3.2.人材や組織体制の課題
- 3.3.データ活用基盤の課題
- 3.3.1.データ活用基盤の構成を明確にする
- 3.3.2.具体的な対策・考え方
- 4.課題を踏まえてデータ活用を進めよう
日本企業のデータ活用の現状と課題
まずは、日本企業におけるデータ活用の現状と、データ活用の推進を妨げている主な課題を紹介します。
データ活用の現状
総務省が公表した「情報通信白書(2020年)(※外部サイトに移動します)」によると、データ活用に対する日本企業の関心は、はっきりと二極化しています。
画像引用元:「図表3-2-1-10 今後のデータ活用予定 」情報通信白書(2020年)|総務省
4~6割程度の企業はデータ活用に関心を示している一方で、残りの企業は「今後もデータを活用する予定はない」と回答しています。特に、生産・製造・物流といった業種で、二極化の傾向が顕著に表れています。
また、将来的なデータ活用に興味を示しているものの、現状では未活用の企業が3割近く存在するのも特徴的です。このような企業では、データ活用の重要性を理解していながら、何らかの課題があり、積極的な行動に移すことができていない可能性が考えられます。
企業のデータ活用が進まない理由・課題
ここでは、企業のデータ活用が進まない理由や課題を見ていきましょう。主に次の2点が着目すべきポイントです。
- データ活用基盤や体制が整っていない
- 組織への浸透が進まない
データ活用基盤や体制が整っていない
規模が大きい会社になればなるほど、事業領域や展開しているエリア、業務プロセスなどが多岐にわたり、複雑になります。また、グループ各社や部門によって使用するITシステムが混在してしまい、属人化やサイロ化(情報が共有されていない状態)などが発生し、情報連携がますます難しくなるという状況です。
本来であれば、上の図のように、リード獲得から受注・アフターフォローまで、特定のルールとシステムが決められている状態が理想です。しかし、実際には、プロセスごとに異なるルールがあり、導入されているシステムがバラバラというケースが存在し、データ活用を妨げる要因になっています。
また、データ収集や分析はできても、業務改善につなげる方法がわからないというケースも珍しくありません。
このように、基盤や体制が十分に整備されていなければ、スムーズなデータ活用の推進が難しくなります。後述する解決策を参考にしながら、少しずつ課題を解消していくことが大切です。
組織への浸透が進まない
組織への浸透が進まない理由として、データ活用の目的が不明確な点があげられます。目的がわからないままデータ活用を進めても、思うような成果が出せず、効果が実感できないため、データ活用を業務プロセスに反映することも難しくなります。
なぜデータ活用が必要なのか、どういった課題解決に向けてデータを活用するのか、経営者や管理職はもちろん、現場の担当者も交えて認識をすり合わせる必要があります。
また、データを活用する場合は、データ収集・統合・分析などにかかわるツールを導入するのが一般的です。取り扱うデータの種類や量が増えるほど、新たなツールの導入を検討せざるを得ない場合もあります。
このような状態では、従業員がツールごとに操作方法や設定方法を覚えなければならず、おのずと負担が増します。
企業のデータ活用で解決できる課題
「情報通信白書(2020年)(※外部サイトに移動します)」によると、データ活用の成果を実感した企業の割合は、全体の5割以上を占めています。日本企業では海外の企業ほどデータ活用は進んでいないものの、データ活用に対して積極的に取り組んでいる企業では、一定の成果が出ていることを示しているといえるでしょう。
画像引用元:「図表3-2-1-13 データ活用の効果」情報通信白書(2020年)|総務省
調査結果を詳しく見てみると、部門によって成果の感じ方に差があることがわかります。つまり、データ活用の成果が現れやすい部門と、そうでない部門があるということです。また、「業務効率化」や「顧客満足度の向上」といったビジネス上の課題によっても、データ活用の成果の現れ方に差が出てきます。
ここでは、データ活用によって課題解決につながっているビジネス上の課題と、将来的に解決が期待される課題を詳しく見ていきましょう。データ活用によって、自社のどのような課題が解決されるのかを想像しながら読み進めてみてください。
データ活用で解決できたビジネス上の課題
「情報通信白書(2020年)(※外部サイトに移動します)」では、企業内の特定の領域で、データ活用によって現れた成果が紹介されています。
画像引用元:「図表3-2-1-15 データ活用の影響」情報通信白書(2020年)|総務省
例えば、製造業では、データ活用が業務効率向上に最も大きくつながっていることがわかります。業種によって異なるものの、顧客満足度の向上といった外面的な成果よりも、業務効率化や生産性向上など、内面的な部分で効果が現れています。
また、「何らかの変化や影響を感じる」と回答した企業は、全体の8~9割を占めています。この結果からも、データ活用の重要性が読み取れるでしょう。
データ活用で将来的に解決が期待されるビジネス上の課題
同資料ではほかにも、将来的にデータ活用が想定される分野が紹介されています。
画像引用元:「図表3-2-2-5 今後データの活用が想定される分野」情報通信白書(2020年)|総務省
日本企業のなかで最も回答数が多かったのは、「製品・サービス設計」です。そのほか、商品企画や研究開発の領域でも、積極的にデータ活用が進むと考えられています。
一方で、海外企業におけるデータ活用に関するデータを見ると、米国では「価値向上」、ドイツでは「流通・販売」に関連する回答が多い傾向にあります。これは、海外の企業が日本企業よりもブランディングやアフターサービスを重要視していることが理由といえるでしょう。
企業のデータ活用を取り巻く課題解決策
「組織への浸透が進まない」、「基盤や体制が整っていない」などの課題は、入念な計画をもとに対策を行うことで解消が期待できます。ここでは、具体的な課題の解決策を3つのポイントに分けて解説します。
データ活用プロセスの課題
適切な形でデータ活用を進めるには、目的設定から分析に至るまでの一連のプロセスを定義することが大切です。手順が明確になれば、フェーズごとに必要なリソースや実施すべきアクション、スケジュールなど、さまざまな事柄が明確になり、よりスムーズな進行へとつながります。
データ活用プロセスの一例は、次のとおりです。
- 自社が抱えている課題をもとに目的を設定する
- 対象領域や担当者、収集すべきデータの種別を決める
- 目的に沿ってデータを収集し、特定のプラットフォームへと統合する
- ツールを用いて分析を行い、結果を可視化する
- 分析結果にもとづいてアクションプランを策定する
- 施策の実施後、KGIやKPIをもとに効果検証を行う
人材や組織体制の課題
データ活用をスムーズに推進するためには、専任担当者やプロジェクトチームが必要です。また、それぞれの担当者に求められる役割を理解したうえで、適切な人員配置を行うこともポイントになるでしょう。
特に次のような担当者は、組織のデータ活用を強力に推進することが求められます。
担当者名 |
主な役割 |
事業マネージャー |
事業内容に対する理解が深く、データ分析前に仮説を立て検証できる意思決定者 |
事業戦略の立案・設計担当者 |
データ活用が事業活動に及ぼす影響を踏まえ、全体的な戦略を設計 |
データサイエンティスト |
データ分析ツールの活用や分析結果の解析 |
分析結果を活用する担当者 |
データに対するアイデアの考案や施策の改善 |
社内で人材が不足する場合は、業務を外注するのも方法の一つです。知見が足りずに適切な運用ができない企業でも、プロの運用手段を参考にノウハウを習得できます。中長期的な考えとして内製化できるように、外部担当者に依頼するからといって丸投げすることなく、依頼企業側(自社)が主体性を持って取り組むことが大切です。
また、セキュリティリスクが高まるため、独自のポリシーやデータの転送方法などにおいて、厳格な基準を設定することが重要です。
データ活用基盤の課題
データ活用基盤の構成を明確にする
データ活用基盤とは、膨大な量のデータを処理するために、必要な情報を即座に抽出できるシステム体系のことです。データ活用は、複数のデータを総合的に活用することを意味するため、システム同士をネットワーク内に集約し、それぞれの統合を図る必要があります。
しかし、社内にはオンプレミスやクラウドを含め、さまざまなシステムが存在します。あらかじめデータ活用基盤の構成を明確にしたうえで、データ統合が必要な箇所や、刷新が求められるシステムを明らかにすることが大切です。
いきなり全体最適化を図るのは難しいため、部分最適化を当面の目標として、スモールスタートを意識するとよいでしょう。
具体的な対策・考え方
ここでは、データ活用の基盤を構築するための具体例として、パナソニックインフォメーションシステムズのサポート内容を紹介します。
当社では、データ活用のためのグループ共通基盤として、大きく2つの軸をもとにサービスを展開しています。
フロントエンドサービス |
BIツールや統計分析ツールをセルフサービス型で提供し、 専門家のサポートを受けながら活用する |
バックエンドサービス |
一元的に、安全にデータを管理しながらも、 |
フロントエンドサービスでは、TableauなどのBIツール、SASのような統計分析ツールをユーザー自身が活用し、必要に応じて専門家のサポートを取り入れることにより、費用を抑えた運用を実現できます。一方のバックエンドサービスは、より品質を重視しており、安全かつスムーズにデータ管理ができます。
フロントエンドとバックエンドというグループ共通の基盤を組み合わせて活用することで、分析ユーザーにさまざまな方向性から利便性の高い分析サービスを提供しています。
課題を踏まえてデータ活用を進めよう
データ活用には、収集・分析・施策への反映といった複数のフェーズが存在します。人員体制の整備やデータ活用基盤の構築などを通じて環境を整えることは、データ活用のボトルネック解消につながるでしょう。
社内に散らばっているデータを集約し、活用できる状態にするには、システム間のスムーズな連携が欠かせません。
パナソニック インフォメーションシステムズが提供する「ASTERIA Warp」は、100種類以上のシステム同士をつなぎ合わせることができるツールです。
ノーコードで連携フローを構築できるため、高度な知識は必要ありません。システム間のスムーズなデータ連携を実現したい方は、ぜひお気軽にご相談ください。