データ活用とは?定義やデータ活用の方法・注意点について解説
クラウドサービスやモバイルアプリ、IoT製品などの普及によって、企業は以前に比べて比較的容易にビッグデータ(膨大なデータ)を取得できるようになりました。
しかし、いざ取得したデータを活用しようと思っても、具体的な方法がわからないと悩んでいる方が多いのではないでしょうか。データ活用プロセスは、目的の明確化から意思決定への反映、検証まで多岐にわたり、それぞれのプロセスで注意すべきポイントがあります。
この記事では、データ活用の定義や活用方法、注意点などをわかりやすく解説します。データドリブンな意思決定が行える環境を構築したい方は、ぜひ本記事の内容を参考にしてください。
目次[非表示]
- 1.データ活用とは?
- 2.データ活用の重要性
- 2.1.戦略策定の重要な道標になる
- 2.2.企業競争力の低下を未然に防止できる
- 2.3.より正確かつ迅速なデータドリブンを実現できる
- 3.データ活用の方法
- 3.1.1. データ活用の目的を明確にする
- 3.2.2. データを収集・加工する
- 3.3.3. 収集したデータを分析する
- 3.4.4. データを可視化する
- 3.5.5. 意思決定に反映して実行・検証する
- 4.データ活用の注意点
- 4.1.データ収集・管理の負担を考える
- 4.2.データ活用ができる体制を整える
- 4.3.個人情報の取り扱いに気を付ける
- 5.業務に社内のデータを活用しよう
データ活用とは?
データ活用の定義
企業活動を通じて取得できるデータは、商品・サービスの販売記録や顧客情報、人事情報など多岐にわたります。このような情報からビジネス上の問題点や解決策を紐解き、企業活動へと反映させることを「データ活用」といいます。
データ活用の具体的な施策は、業種や業態、目的などによって大きく異なります。例としては以下のようなものが考えられます。
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小売業
顧客属性や行動履歴、来店時の動線などのデータにもとづき、販売戦略や陳列方法を最適化。POSデータを活用した集客施策の改善やスタッフのシフト調整など。 -
製造業
製造管理データの活用による製造ラインの最適化。在庫情報にもとづく需要予測。商品データとAIを組み合わせた不良品の検出など。 -
金融業
顧客の利用状況をもとに独自のクレジットスコアを生成し、与信審査のスピードや精度を向上。顧客の資産データや経済状況などにもとづく、パーソナライズ化された投資アドバイスなど。
また、当社(パナソニック インフォメーションシステムズ)も、データ活用に注目しています。データにもとづいて現状を的確に把握し、将来的に起きることを予測することでデータドリブンな経営の実現につながるという考えのもと、お客様が意思決定をよりスムーズに進められるようサポートしております。
データ分析との違い
データ活用は、データ収集から効果検証、施策の改善までを含む、一連のプロセスを表す言葉です。
一方のデータ分析は、データ活用のプロセスの一つです。ビジネスにおける課題を理解して関係者間で認識をすり合わせ、テーマに沿って推進することを目的とします。データ分析は、ビジネスの課題解決や事業成長の手段であり、結果を用いてのビジネスアクションや意思決定の精度向上につなげられなければ意味がありません。
データ活用は、データ分析も含めて一連のビジネス成果の刈り取りから、ビジネスプロセス変化までを意識した言葉といえます。
データ活用の重要性
データ活用によって、客観的な指標をもとに販売や経営の戦略を考えることが可能になります。その結果、次のようなメリットが生まれます。
- 戦略策定の重要な道標になる
- 企業競争力の低下を未然に防止できる
- より正確かつ迅速な意思決定につながる
それぞれの要素を紐解きながら、データ活用の重要性を理解していきましょう。
戦略策定の重要な道標になる
経営戦略や営業戦略など、事業の根幹にかかわる重要な方針を決める際は、経験測などの主観的な情報に加えて、客観的な情報も必要です。主観的な情報のみを参考に意思決定を行うと、個人の思想が誤った判断につながる可能性があるためです。
企業が取得できるデータには、定性情報と定量情報がありますが、どちらも客観的な事実がベースとなっています。主観的な情報と客観的な情報を組み合わせて活用することで、自社が置かれている状況や市場環境などを正確に把握できます。その結果、精度の高い戦略策定が実現するでしょう。
データ活用は戦略策定の重要な道標となり、持続可能な企業活動を実現するうえでも欠かせません。
企業競争力の低下を未然に防止できる
総務省が発表した「情報通信白書(2023年)(※外部サイトに移動します) 」によると、米国・ドイツ・中国でデータ(パーソナルデータ以外)を積極的または、ある程度活用している企業の割合は、全体の8割以上を占めています。
画像引用元:「5. パーソナルデータ以外のデータの活用状況」情報通信白書(2023年)|総務省
海外の企業ではデータ活用が進んでいることがわかりますが、一方で日本企業の状況を見てみると、後れを取っていることがわかるでしょう。
前述のとおり、戦略策定の精度を向上させるには、データ活用が不可欠です。データ活用が進んでいない状態では、企業競争力が低下する可能性も考えられます。
より正確かつ迅速なデータドリブンを実現できる
従来、データの分析は専門家の領域であり、データ活用の推進には専門家によるサポートが必要とされていました。しかし、データ活用には、その事業に関する深い理解が求められ、なおかつ活用できるデータが限定的といった課題がありました。
そこで推進されるのが、組織としてデータをビジネスに活かすという意識変革と、現場自ら主体的にデータを活用したアクションを行うことです。
自社でデータの分析・活用ができれば意思決定が早くなり、データドリブンな経営につながります。
データ活用の方法
ここでは、実際にデータを活用する方法を、5つの手順に分けて解説します。
- データ活用の目的を明確にする
- データを収集・加工する
- 収集したデータを分析する
- データを可視化する
- 意思決定に反映して実行・検証する
1. データ活用の目的を明確にする
明確な目的がないままデータを収集すると、データを活用するところまでたどり着かない可能性があります。
まずは、自社が置かれている状況や現状の課題を洗い出し、その解決に向けた現実的な目的を設定しましょう。例えば、次のような内容が考えられます。
在庫管理や生産管理といった日々の業務品質の改善や効率化
- 製造する企業視点ではなく、消費者ニーズに合った販促施策への最適化
設備状況と品質の見える化による、課題への即日対応とロスコストの削減
このような事柄を検討するのは上層部であっても、実際にデータの収集や分析を行うのは現場担当者です。そのため、現場担当者も含めて検討することが大切です。
2. データを収集・加工する
目的を明確にしたら、それに合致したデータを収集します。
内部データだけではなく、外部データも参考になるため、あわせて活用を検討することが大切です。具体的には、次のようなデータを収集します。
- 販売・売上・在庫に関するデータ
- 顧客属性や行動履歴などの顧客情報
- Webサイトや広告、メールマガジンなどに関するマーケティングデータ
- 従業員に関する人事情報
- アンケート結果やヒアリングの回答などの定性情報
- 国や自治体、リサーチ会社などが公表するサードパーティデータ
データの数と種類は、多いほうが分析時の信ぴょう性が高まります。しかし、一気に広範囲のデータを集めてしまうと、処理・分析が難しくなってしまう場合があります。
売上高や受注率、担当者別のデータなど、データ活用にあたってどういった情報が必要になるか、収集するデータを絞り込んで進めることを意識し、徐々に集めるデータの数と種類を増やしていくと良いでしょう。
また、収集したデータには、エクセルのデータのように集計・比較が可能な「構造化データ」と、提案書やデザインデータといった構造定義されていない「非構造化データ」があります。また、JSONやXMLなど、形式が異なるデータが複数存在するケースも珍しくありません。
形式や種類が異なるデータは、加工を行ってフォーマットや形式などを整えることで、データ分析がしやすくなります。企業内のシステムを連携するための「EAI」や、データの抽出・変換・書き出しができる「ETL」などのツールを活用すると、スムーズにデータを加工することが可能です。
3. 収集したデータを分析する
収集したデータは、分析を行ってはじめて意味を持ちます。収集したデータに相関性が見つかれば、それぞれの指標改善のために投与すべき予算や人的リソース、あるいは実施すべき施策が明らかとなります。
とはいえ、収集したデータをただ眺めていても答えは出ないため、以下のように着目すべき観点を明確にすることが重要です。分析の軸は、解決したい課題に応じて柔軟に変更しましょう。
規則性 |
一定の法則によって繰り返されている事象はあるか |
相関関係 |
事象同士に関連性が見当たるか (一方の指標が上昇するともう一方も上がるなど) |
因果関係 |
特定の要因でもたらされた結果があるか |
異常値 |
全体のなかで特に目立つ結果があるか |
データ分析を行う際は、エクセルやGoogleスプレッドシートのほか、BIツールをはじめとする専用ツールを活用する方法が一般的です。また、データベースから分析ツールへとスムーズにデータを出力するための、EAI・ETLツールを導入するのもよいでしょう。
4. データを可視化する
分析したデータは、誰が見ても内容が把握できるよう、表やグラフなどを活用して数値を可視化する方法がおすすめです。第三者視点でもわかりやすい分析結果があれば、資料を提出した際に上司や取引先からの理解を得やすくなるでしょう。
また、分析に活用するデータは単一のデータ種より、複数のデータ種をかけ合わせて考えることもポイントです。EAIツールなどを活用し、複数のデータ種を集めることで、より正確に情報をつかむことができます。
複数のデータ種を統合して分析することは、効果的なデータ分析・活用につながるといえるでしょう。
5. 意思決定に反映して実行・検証する
分析結果をもとに社内で意見をまとめ、具体的なアクションプランへと落とし込みます。このステップでは、複数の従業員同士ですりあわせを行い、主観的な視点に陥らないよう注意が必要です。
また、施策を実施したあとは効果検証を行うことが大切です。KGI(最終目標)やKPI(中間目標)にもとづいて成果を評価し、課題解決につながっているかどうかを確認しましょう。
データ活用の注意点
データを活用する際は、いくつか注意すべきポイントがあります。
データ収集・管理の負担を考える
データ収集から分析、施策の改善までの流れを構築するには、ある程度の費用がかかります。費用の一例として、データを収集・分析するためのツールの導入や新たな人材の採用、従業員の教育などに関する費用があげられます。
また、新旧システムの統合時に障害が発生するなど、保守管理の手間が大幅に増える可能性も考えられます。
データ活用においては、このように想定される金銭的・人的な負担を考慮することが大切です。まずは、特定の部署のみで運用するような形で、スモールスタートを心がけましょう。
データ活用ができる体制を整える
データ活用を推進するには、データを取得するプロセスを構築するのと同時に、取得したデータを社内で分析・活用するための体制を整えることも必要です。
ビジネスで成果をあげることを目的として、データ活用を積極的に推進するチームを作りましょう。そのうえで、高度な分析を行う必要が生じた場合は外部の専門家に相談したり、内部人材の育成を進める等の中期的な対応を 検討します。いずれも、データ活用に必要なロードマップとして、予算も含めて描いていくことが大切です。
個人情報の取り扱いに気を付ける
使用するデータの種類によっては、個人のプライバシーを侵害する恐れがあるので注意しましょう。
先ほど紹介した「情報通信白書(2023年)(※外部サイトに移動します)」によると、サービス利用時のパーソナルデータの提供について、不安を感じる消費者が非常に多いことがわかります。特に、望まない形でのデータの再利用や、情報流出後の悪用に大きな不安を感じています。
画像引用元:「8.サービス利用時のパーソナルデータ提供に抵抗を感じる理由」情報通信白書(2023年)|総務省
万一、顧客や取引先の情報が外部に流出すると、企業の信用に大きな悪影響を及ぼすでしょう。パーソナルデータを扱う機会が多い企業のデータ活用では、情報漏洩や悪用への対策が不可欠です。
業務に社内のデータを活用しよう
精度の高いビジネス戦略の策定や経営課題の解決には、適切な意思決定が欠かせません。データドリブンな意思決定が、持続可能な企業活動へとつながります。
社内のシステムが煩雑化している場合は、まずバラバラになっているデータを連携させるところから始めましょう。データの加工に時間がかかっている場合も、連携の方法に改善の余地があります。
パナソニック インフォメーションシステムズが提供する「ASTERIA Warp」は、複数のシステム間でスムーズなデータ連携を実現できるツールです。ノーコードかつ感覚的な操作でデータ連携のフローが構築可能なため、専門知識がない方でも安心して利用できます。
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