
ERP導入の手順と成功ポイント:目的の明確化から導入ステップまで解説
ERPシステムとは、会計や人事、販売などの基幹業務に使用する情報を統合し、データを一元管理するためのツールです。
ERPシステムは部門を越えて使用することになるため、業務フローの見直しも必要になります。そのため、ERP導入の目的を明確化したうえで、基本的な導入の流れを把握し、検討を進めることが重要です。
本記事では、ERPシステムを導入する流れを8つのステップに分けて詳しく解説します。導入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
目次[非表示]
- 1.ERPシステム導入の必要性
- 2.ERPシステム導入のメリット・効果
- 2.1.経営戦略など意思決定の迅速化
- 2.2.業務の標準化による業務品質の向上
- 2.3.システム連携による業務効率の向上
- 2.4.セキュリティを含めた内部統制の強化
- 3.ERPシステム導入のデメリット
- 3.1.導入や保守・運用など費用がかかる
- 3.2.既存の業務を見直す必要がある
- 3.3.運用体制を整える必要がある
- 3.4.システム選定が難しい
- 4.ERPシステムを導入する流れ
- 4.1.1. 自社の課題やERPの導入目的を明確にする
- 4.2.2. 対象範囲(業務領域)を設定する
- 4.3.3. ベンダーへの提案依頼書(RFP)を作成する
- 4.4.4. システム・ベンダーを選定する
- 4.5.5. 要件定義を行う
- 4.6.6. システムを導入しインフラを整備する
- 4.7.7. データを移行する
- 4.8.8. 運用しながら改善する
- 5.ERPシステムの導入を成功させるポイント
- 5.1.導入前に目的を整理する
- 5.2.導入段階から現場を巻き込んで検討を進める
- 5.3.豊富な実績と経験があるベンダーを選ぶ
- 6.特徴を押さえてERPシステムの導入を進めよう
ERPシステム導入の必要性
ERP(Enterprise Resource Planning)システムは、さまざまな部門やプロセスを統合して、情報の流れを一元化するためのツールです。会計管理や販売管理、人事など、企業の基幹業務に関わるデータを一元管理できるのが特徴です。
企業の資源である「ヒト」「モノ」「カネ」の情報を1つのシステムで一元管理することで、情報共有が円滑になり、企業全体の業務効率化が実現します。また、部門を問わず、基幹業務に関する社内のあらゆるデータを効率よく活用できるようになるため、迅速な意思決定や経営戦略の策定にも役立ちます。
ERPは企業が成長し、利益を最大化していくうえで欠かせない存在といえるでしょう。
ERPシステム導入のメリット・効果
ERPシステムを導入する際は、メリットとデメリットを踏まえて費用対効果を検証することが大切です。
まずは、ERPシステムのメリットや効果を解説します。
経営戦略など意思決定の迅速化
ERPシステムを導入すると、会計・人事・生産・物流・販売などのデータを1か所に集約できます。これらのデータは企業経営における意思決定に欠かせない要素であり、情報を集約することで経営戦略や中長期計画の質を高められます。
また、リアルタイムで必要な情報を参照できるようになることも大きなメリットです。各部門の現状を正確に把握しつつ、迅速に意思決定を行えることは、変化の激しい現代のビジネス環境において強みになります。
業務の標準化による業務品質の向上
ERP導入により、データ管理やその活用が統一されることで、業務の標準化ができます。
会計システムや販売管理システムなど、各部門で個別に運用されている場合、独自のルールがあったり、情報の管理が属人化されてしまったりするため、人によって業務品質に差が生まれてしまいます。
ERPシステムの運用には、複数の部門で使用できるようにルールを整備し、共通認識を持って活用することになるため、属人化が起きづらくなり、業務の標準化につながります。
ただし、ERPシステムを導入しただけでは意味がないため、社内で活用できるよう導入時に業務フローを整備し、マニュアルを作るといった対応が必要になります。
システム連携による業務効率の向上
ERPシステムは、各基幹システムの情報を集約して管理できるため、データの重複入力を避けられます。そのほか、ワンストップで必要な情報にアクセスできるため、確認作業の手間を最小限に抑えられるのもポイントです。
部門間の複数のシステムを統合することで、部門を超えた情報共有や業務連携がスムーズになるため、業務効率化が期待できます。結果的に、人件費や事務作業にかかるコストを減らすことにもつながります。
セキュリティを含めた内部統制の強化
社内の情報が適切に管理されていないと、管理者の見えないところで情報漏えいや不正利用が起きるリスクが高まります。ERPシステムを活用することで、セキュリティやガバナンスの強化ができます。
ERPシステムには、ユーザーの利用状況やデータの変更内容などを統合的に管理する機能があります。社内のデータを一元管理することで、データの改ざんや破棄といった不正行為の予防につながります。何らかのトラブルが発生した場合でも、ログを見ながら迅速に対処できるでしょう。
また、セキュリティや管理において法改正があった場合も、システム単位での調整が不要になるのもポイントです。
ERPシステム導入のデメリット
続いて、ERPシステムを導入するデメリットを紹介します。導入から運用開始までスムーズに進められるよう、デメリットも理解しておきましょう。
導入や保守・運用など費用がかかる
ERPシステムは機能が多く、対応できる業務の範囲も広いため、初期費用だけでも数百万程度の予算が必要になるケースが一般的です。特に、ソフトウェアをインストールして使用するオンプレミス型は、ライセンス費用などが高額になる傾向があります。
初期費用を抑えたいのであれば、クラウド型を検討するとよいでしょう。バージョンアップや保守にかかる費用も、オンプレミス型よりも抑えやすいといえます。
既存の業務を見直す必要がある
ERPシステムは部門をまたいで活用することになるため、現状の業務そのものを見直す必要が出てきます。部門間の連携がうまく進まないと、ERPシステムの導入効果が最大限発揮されないことがあるので注意しましょう。
ERPシステムの導入をきっかけに、他システムとのデータ連携が必要な業務やデータの活用手段などを部門同士で話し合い、密な連携体制を構築するのも方法の一つです。現場のスタッフに状況を確認しながら、業務工程の整備を進めましょう。
運用体制を整える必要がある
ERPシステムを導入し、スムーズに運用を行うためには、環境を整備する必要があります。社内にデータが散在している場合は、導入時にデータを移行しなければなりません。移行すべきデータの種類や容量、通常業務に与える影響などを事前に考慮することが大切です。
また、責任者や担当者の任命、マニュアルや研修の整備など、システムの定着化に向けた取り組みも欠かせません。ERPにはさまざまな情報が集約されるため、情報セキュリティに関する知識・認識も社内で共有する必要があります。
導入全体のスケジュールを考えるにあたって、運用体制の整備についても併せて検討することがポイントです。
システム選定が難しい
ERPシステムは種類が多く、それぞれ価格や機能が大きく異なります。数あるERPのなかから、自社に合うものを選ぶことは難しいと感じることもあるでしょう。
ベンダーによっては、ERPシステムの導入から運用までサポートを依頼できます。第三者の視点から課題の特定や目的の設定、要件定義などもサポートしてくれるため、最適なERPシステムを選定しやすくなります。
ERPシステムを導入する流れ
ERPシステムで管理する会計・人事・販売といったデータは、企業の中核部門に関係するため、基本的な手順に沿って着実に進めることが重要です。
ここでは、ERPシステムを導入する流れを8つのステップに分けて、具体的な進め方を解説します。
自社の課題や導入目的を明確にする
対象範囲(業務領域)を設定する
ベンダーへの提案依頼書(RFP)を作成する
システム・ベンダーを選定する
要件定義を行う
システムを導入しインフラを整備する
データを移行する
運用しながら改善する
1. 自社の課題やERPの導入目的を明確にする
まずは、データ管理において自社が抱えている課題を洗い出します。
目的と課題の整理ができていないと、ERPを導入しても業務改善につながらないことがあるため注意が必要です。なぜERPを導入するのか、導入によって解決したい課題はどれなのかを明確にしましょう。
例えば、ERPシステムの導入によって、販売管理システムと在庫管理システムを連携することで、在庫の適切な管理や販売状況のコントロールといった課題が解決できる可能性があります。
その他、データの重複入力による手間の削減やシステム間の内部統制の不備といった課題解決なども、導入の理由として考えられます。
2. 対象範囲(業務領域)を設定する
ERPシステムは、会計や人事管理、販売管理などの複数のモジュールで構成されています。いきなりすべての領域にシステムを適用させると現場が混乱し、定着しない可能性があります。
そのため、まずは経理部門と販売部門のみで利用するなど、対象範囲を絞り込むことが重要です。スモールスタートを意識すれば、成功体験を別の部門で活かせるほか、不要なコストの削減にもつながります。
3. ベンダーへの提案依頼書(RFP)を作成する
提案依頼書(RFP)とは、ベンダーに要望を伝えるための前提条件が整理された書面です。
RFPの作成によって、ERPシステムに求める要件が明確になるため、ベンダーとのスムーズな打ち合わせや質の高い提案につながります。
RFPには、次のような条件を記載しておくとよいでしょう。細かく要件を記載する必要はなく、シンプルに全体像をまとめるのがポイントです。
【RFPで記載したい内容の一例】
導入の経緯・目的
解決したい課題
現時点での要件
リプレイスする範囲
予算
スケジュール
システムに関する質問
RFPがあることで、複数のERPシステムを検討する際に、項目ごとでの比較が可能になるというメリットもあります。
4. システム・ベンダーを選定する
ベンダー各社からの提案が揃ったら、自社に合うベンダーとシステムを選定します。
ベンダーの選定はシステム導入の結果に影響するため、慎重に行いましょう。自社の要望を考慮してくれるかという点はもちろん、第三者の視点で的確な提案を行なってくれるかどうかは重要なポイントです。
ERPシステムの導入は、組織全体の業務に関わるため、プロジェクトは長期にわたります。そのため、レスポンスの早さやサポート内容など、スムーズなコミュニケーションが行えるかどうかも確認しておきましょう。
パナソニックインフォメーションシステムズでも、クラウド対応型ERPパッケージ「ビズインテグラル」を提供しております。IT業界で60年以上、システム構築と向き合ってきた豊富な経験をもとに、お客様の課題解決に向けてERP導入の支援をいたします。
5. 要件定義を行う
ERPシステムにどのような機能が必要か、ベンダーと協力して要件定義を実施します。要件定義は社内で完結させることもできますが、ベンダーからアドバイスを受けることで、より具体的な内容を盛り込むことができるでしょう。
要件定義に盛り込みたい内容は、主に次のとおりです。
機能要件 |
・会計や人事管理などのシステムに求める機能 |
非機能要件 |
・サーバー性能 ・拡張性 ・運用・保守性 ・セキュリティ |
実行計画 |
・導入までのスケジュール ・プロジェクトメンバー構築 |
ERPシステムの導入によって業務フローの変更や不要な業務が発生する場合があるため、状況に応じて業務全体の見直しが必要です。上層部や情報システム部門だけで内容を固めるのではなく、現場担当者の意見も取り入れつつ、要件定義を行いましょう。
6. システムを導入しインフラを整備する
導入するERPシステムの種別に応じてインフラを整備しましょう。
オンプレミス型のERPは、サーバーやネットワークなどのインフラ整備が必須です。クラウド型の場合は、サービス提供会社が管理するオンライン上のシステムにアクセスするため、特に自社でインフラ整備を行う必要はありません。
また、システムの運用を踏まえて社内体制の整備も行いましょう。具体的には、データの取り扱い方や移行時のルール、責任者・担当者の選定などを行います。マニュアルを作成したり、社員研修を実施したりと、システムの定着化に向けた取り組みも欠かせません。
7. データを移行する
新旧システム間で既存のデータを移行します。取り扱っているシステムの種類によっては、移行すべきデータが膨大な量に及ぶケースがあるため、事前に移行するデータの種別や優先順位を決めておくとよいでしょう。
「誰が・いつ・どのような作業を行うか」といった内容を定めた移行計画書があれば、責任の範囲や期日が明確になります。
8. 運用しながら改善する
ERPシステムは導入して終わりではなく、繰り返し検証と改善を行い、運用の費用対効果を高めることが大切です。
ERPシステムの導入効果としては、業務効率化や生産性向上、意思決定のスピードアップなどがあげられます。導入前にこのような目標を設定し、運用中の実績と比較しましょう。また、現場担当者の意見をヒアリングしつつ改善を進めると、よりスムーズな定着化につながります。
ERPシステムの導入を成功させるポイント
ここでは、ERPシステムの導入を成功させるポイントを紹介します。
- 導入前に目的を整理する
- 導入段階から現場を巻き込んで検討を進める
- 豊富な実績と経験があるベンダーを選ぶ
検討事項が多くなるため、運用開始を希望する時期から逆算し、スケジュールに余裕を持って進めましょう。
導入前に目的を整理する
自社の課題解決につながるERPシステムを導入するには、課題を洗い出したうえで、システムを導入する目的を明確にすることが大切です。
たとえば、当社ERPシステムにご相談いただいたお客様は、スクラッチ開発した独自のシステム(レガシーシステム)からパッケージのERPを導入することが多い印象です。
この場合、レガシーシステムから情報を取り出しにくい、分析しにくいなどの課題を抱えられています。そのような課題に対しては「ERPシステムで情報を統合し、上層部に早く情報を伝える」などの目的を設定できます。
最適なERPシステムを選ぶためにも、課題に紐づけて目的を整理することが大切です。
導入段階から現場を巻き込んで検討を進める
ERPシステムを導入したとしても、従業員が使いこなせないようでは定着が進みません。情報システム部門やDX推進部などが主導で導入を進める際は、現場の意見が反映されないケースがあるため注意が必要です。
このような事態を避けるには、導入段階から現場の意見を吸い上げることが大切です。また、トライアルやデモを使用する際も、現場担当者にツールを操作してもらい、使い勝手や機能性を検証しましょう。
豊富な実績と経験があるベンダーを選ぶ
ERPシステムは基幹業務に紐づけることになるため、システムにトラブルが起きると経営に大きな影響を与えます。サポート体制が十分に整備されたベンダーであれば、トラブルが起きた場合でも、迅速かつ適切な対応が可能です。
また、ERPシステムは長期間にわたって使用するのが一般的です。一度導入するとすぐに乗り換えるというのは難しくなるため、豊富な実績があり、信頼できるベンダーを選びたいところです。
ERPシステムの選び方や注意点については、こちらのページで詳しく解説しています。
特徴を押さえてERPシステムの導入を進めよう
ERPシステムは、社内の基幹業務に関わるシステムを連携するためのツールで、業務効率化や意思決定の適性化・迅速化に役立ちます。社内のシステム運用やデータ活用に課題を抱えているのであれば、ERPシステムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
パナソニック インフォメーションシステムズでは、1,500社以上の採用実績を持つ国産ERPシステム「ビズインテグラル」を取り扱っています。60年以上のIT業界に携わってきた実績と知見をもとに、お客様のニーズに合わせて最適な導入・運用プランのご提案が可能です。
以下のページからビズインテグラルの特徴をまとめた資料もダウンロードできますので、ぜひチェックしてみてください。