2025年改正労働安全衛生規則の要点とは? 快適安全な職場環境の実現について解説

熱中症対策が「義務化」される時代へ

2025年6月1日、改正された労働安全衛生規則が施行されました。この改正は、近年増加傾向にある職場での熱中症による死亡災害を受け、より実効性のある対策を義務化するものです。特に、気候変動の影響で夏季の気温が上昇し続ける中、現場での迅速な対応と予防策の強化が求められています。

厚生労働省の発表によると、職場における熱中症による死亡者数は年々増加傾向にあり、2024年で最多となる1,257人に達しました。もともと死亡者が多い7月・8月に加え、近年は6月の死亡者数も増加しており、暑熱順化が不十分な初夏の時期における対策の重要性が浮き彫りになっています。
(出典:  令和6年「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」

本稿では、改正のポイントを整理するとともに、現場での課題とその解決策、そしてIoTを活用した快適で安全な職場環境づくりの展望についてご紹介します。

目次[非表示]

  1. 1.熱中症対策が「義務化」される時代へ
  2. 2.法改正のポイント:2025年6月1日施行の改正労働安全衛生規則
    1. 2.1.義務1:報告体制の整備と周知
    2. 2.2.義務2:緊急時の判断・対応手順の作成と共有
    3. 2.3.義務3:関係者への教育と訓練
  3. 3.現場の実態と対策のギャップ
    1. 3.1.課題1:初期症状の見逃し
    2. 3.2.課題2:暑熱順化(しょねつじゅんか)が不十分な6月の危険性
    3. 3.3.課題3:熱中症対策の認知や効果的な施策の実施が不十分
  4. 4.IoTを活用した熱中症対策:Gravioによる現場支援
    1. 4.1.ポイント1:環境モニタリングの自動化
    2. 4.2.ポイント2:データ蓄積とリスク予測
    3. 4.3.ポイント3:ノーコードでできるオールインワンのIoTプラットフォーム
  5. 5.快適な職場環境づくりへの展望
  6. 6.おわりに:法令遵守から職場改善へ


法改正のポイント:2025年6月1日施行の改正労働安全衛生規則

今回の改正では、以下の3点が事業者に義務付けられます。

義務1:報告体制の整備と周知

熱中症の兆候がある作業者を早期に発見・報告できる体制の構築が求められます。バディ制の導入や巡視体制の強化が推奨されており、現場での「気づき」を促す仕組みが重要です。

企業においても、緊急連絡先の明示や医療機関との連携体制の整備を進め、作業者が安心して働ける環境づくりを行う事が求められます。

義務2:緊急時の判断・対応手順の作成と共有

医療機関への搬送や冷却措置など、迅速な対応を可能にする手順をあらかじめ整備し、関係者に周知する必要があります。特に「一人にしない」「冷却措置の徹底」など、初期対応のフローを明文化することが求められます。

スマートフォンやタブレットで確認できるデジタル手順書の活用による、現場での即時対応力を高めることも有効です。

義務3:関係者への教育と訓練

作業者や管理者に対して、熱中症の予防・対応に関する教育を実施し、現場での判断力と対応力を高めることが求められます。eラーニングやVR訓練など、体験型の教育手法が注目されています。

また、「熱中症セルフチェックシート」や「注意喚起ポスター」などのツールを活用し、日常的な意識づけを図ることも有効です。

現場の実態と対策のギャップ

法改正の背景には、現場での実態と対策のギャップがあります。具体的には、以下の課題が報告されています。

課題1:初期症状の見逃し

「めまい」「汗が出ない」「倦怠感」など、軽微な症状が放置されがちで、重症化するケースが多く報告されています。特に単独作業者の場合、異常に気づかれにくいという課題があります。

課題2:暑熱順化(しょねつじゅんか)が不十分な6月の危険性

生物は気候の変動に伴い、徐々に暑さや寒さに順応する機能を備えています。これを「暑熱順化(しょねつじゅんか)」といいます。
(出展:厚生労働省|暑熱順化

前述の通り、6月の死亡者数が増加しつつあり、暑さに慣れていない時期の対策が急務です。厚労省や環境省も各種キャンペーンを展開し、企業に対して早期対応を呼びかけています。

課題3:熱中症対策の認知や効果的な施策の実施が不十分

帝国データバンクが2025年6月に公開した調査「熱中症対策に関する企業の実態アンケート 」によると、熱中症対策の義務化に対する認知度はまだ低く(55.2%)、重要な指標となるWBGT(暑さ指数)の認知度も十分でない状況です(54.8%)。

「(熱中症)対策を行っている」と回答した企業は95.5%にのぼりますが、具体的な実施施策としては、「空調設備の増設(27.2%)」「熱中症に関する報告体制の構築 (15.2%)」「職場巡視やバディ制、ウェアラブル機器などによる熱中症の把握 (4.8%)」などの効果的な予防施策にまで手が及んでいる企業はまだ少ないのが現状となっています。
(出展:熱中症対策に関する企業の実態アンケート

IoTを活用した熱中症対策:Gravioによる現場支援

こうした課題に対し、IoT技術を活用した対策が注目されています。エッジ型IoTプラットフォーム「Gravio」は、現場の安全性と快適性を高める有効な手段です。

ポイント1:環境モニタリングの自動化

Gravioは、温湿度・人感・CO2センサーなどを活用し、作業環境をリアルタイムで監視します。センサー数値の組み合わせでWBGT値(暑さ指数)の算出も可能で、危険レベルに達した場合はアラート通知を発信。これにより、作業者や管理者が即座に対応できる体制を構築できます。

ポイント2:データ蓄積とリスク予測

過去の環境データを蓄積・分析することで、「どの時間帯・場所でリスクが高いか」を可視化し、作業計画に反映できます。これにより、現場の納得感と行動変容を促すことが可能です。

ポイント3:ノーコードでできるオールインワンのIoTプラットフォーム

Gravioとは、複数現場の様々な情報をノーコードで収集・統合し、活用までをワンストップで実現できるIoTプラットフォームです。

データ収集用デバイス、クラウドでのデータ格納・管理、可視化までをトータルで提供、様々なデータの活用が肝となる現場DX実現において、高い拡張性とシンプルな展開を両立します。


快適な職場環境づくりへの展望

熱中症対策は「安全」のためだけでなく、「快適な職場環境づくり」にも直結します。従業員の健康意識の向上や、企業としての安全配慮の姿勢は、働きやすさや定着率の向上にも寄与します。

また、IoTを活用した環境モニタリングは、業務効率化や省人化にもつながるため、今後の人手不足対策としても有効です。安全対策はコストではなく、企業価値を高める投資と捉えるべきでしょう。

おわりに:法令遵守から職場改善へ

改正労働安全衛生規則は、単なる法令遵守にとどまらず、職場改善の好機でもあります。IoTを活用した環境モニタリングは、熱中症対策の実効性を高める有効な手段です。

「Gravio」は、現場の安全性と快適性を両立させるツールとして、おすすめです。今すぐできる対策から始め、持続可能な安全文化の構築を目指しましょう。


※「Gravio」はアステリア株式会社の登録商標です。

松尾和世司
松尾和世司
製造業向け生産管理システムの構築、インフラ運用、データセンターセキュリティ担当などを経て現職。 マーケティング施策の立案と実行および、お客様にITのトレンドや最新技術情報をお届けするエヴァンジェリストとして活動。 【資格】 ITストラテジスト/プロジェクトマネージャ(他、情報処理技術者試験 全区分) 情報処理安全確保支援士(登録番号:007992) Salesforce 認定 Service Cloud コンサルタント BCAO認定 事業継続主任管理士 他

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